統合バイオサイエンスセンター

研究内容

生物が地球上で生存する上で、水、酸素、光や温度など、環境から大きな恵みを受けている。人間は多くの地下資源を用いて物質を合成し、農薬も大量に使用して生活を豊かにしているが、反面多くの物質による環境汚染を引き起こしている。環境に出ている物質の中には、人間や動物のホルモン受容体に結合して、ホルモン類似作用やホルモン阻害作用をする物質が見出され（環境ホルモン、内分泌かく乱物質）ている。

女性ホルモンや化学物質が、動物に悪影響を及ぼす時期や量、関連遺伝子を明らかにする必要がある。動物はそれぞれ特有な発生方式や生活様式を持っているので、ハツカネズミ、アメリカワニ、オオサンショウウオ、アフリカツメガエル、メダカ、オオミジンコなどを用いて広く研究している。このような研究を通して、地球環境の保全や生物多様性の保存に貢献したいと考えている。

生殖器官への不可逆的なホルモン影響

マウスでは、胎児期から生まれて数日間（臨界期）の女性ホルモンやホルモン関連物質の影響で、不妊や生殖器官の腫瘍化が起こる。新生児期のエストロゲン投与により、膣上皮細胞の細胞増殖因子の高発現・その受容体の活性化・細胞内タンパク質のリン酸化カスケード・エストロゲン受容体のリン酸化および活性化、というポジテイブフィードバックループができることを明らかにした。エストロゲン受容体を介した遺伝子発現、細胞増殖機構、不可逆的細胞増殖の分子メカニズムを追及している。

動物の性と温度・化学物質

環境要因で性が決まる動物がいる。アメリカワニは温度依存性の性分化機構をもち、33度で孵卵すると雄に、30度では雌になる。卵を女性ホルモンで処理すると雄になる温度でも雌に分化する。また、オオミジンコは雌が雌を産む単為生殖で増えるが、幼若ホルモンの影響で雄を産むことを見出した。化学物質の影響に加えて、ワニの温度依存性の性分化やミジンコの性分化にかかわる遺伝子の解明にも取り組んでいる。

ホルモン受容体の分子進化

生物進化のどの段階からホルモンやホルモン受容体による体の恒常性・生殖・発生の制御機構ができたのだろうか。巻貝、ナメクジウオ、ヤツメウナギ、ハイギョなど進化上重要な生物のステロイドホルモン受容体の構造とその機能を調べることにより、ホルモン受容体の分子進化を明らかにしようとしている。

Select Reference

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