岡崎統合バイオサイエンスセンターリポート2010

岡崎統合バイオサイエンスセンターリポート2010の刊行にあたって

岡崎統合バイオサイエンスセンターは,岡崎3機関(基礎生物学研究所,生理学研究所,分子科学研究所)と連携し,新たなバイオサイエンスを切り開くことを目的として設置された,上記3研究所の共通研究施設である。岡崎統合バイオサイエンスセンターでは,平成22年度から「環境分子・生体分子応答機構研究推進事業」,「生命機能分子から生命システムの全体像にせまる統合バイオサイエンス」の2つの研究プロジェクトを推進している。「環境分子・生体分子応答機構研究推進事業」においては,環境分子による生理機能撹乱の本質を明らかにし,環境分子が生物へ及ぼす影響の定量予測法の確立,環境分子による生物への悪影響の低減策確立のための科学的基盤の確立を目的として,1)環境分子の受容・応答機構研究,2)環境分子による生理機能撹乱の統合的研究,3)生殖細胞分化機構研究,4)細胞のストレス応答・ストレス防御機構研究,5)生体分子による正常生理機能制御の統合的研究,6)環境分子の生物影響に関する統合的データベース構築というサブテーマを設定して研究を実施している。また,「生命 機能分子から生命システムの全体像にせまる統合バイオサイエンス」においては,高次生命現象を生命機能分子の構造的側面にまで掘り下げて理解することにより,生命システムの全体像を解き明かすことを目的として,1)生命現象の機能解析(特に神経回路網形成や視覚の解析),2)生命機能分子の網羅的探索(特に発生・神経回路網形成に関わる蛋白質の遺伝子レベルでの解析),3)生命機能分子の構造・機能解析(網羅的探索で明らかにされた蛋白質(大部分は天然変性蛋白質)のうち高次生命現象にとって重要なもの,およびチャネル蛋白質やセンサー蛋白質などの膜蛋白質を対象とする),4)高次生命システムと生命機能分子の計算機シミュレーションというサブテーマを設定して研究を実施している。これらのプロジェクトは,岡崎統合バイオサイエンスセンターにおける研究の中核であるとともに,岡崎統合バイオサイエンスセンターと岡崎3機関との間の連携の核として役割も担っている。岡崎統合バイオサイエンスセンターとしては,構成員の総力を挙げて,これらのプロジェクトに取組んでいる。

2010年度は,岡崎統合バイオサイエンスセンターにとっては設立10周年という節目の年であった。10周年という節目を契機とし,今後さらに岡崎統合バイオサイエンスセンターを発展させるためにはセンターはどうあるべきかについての議論も進めているところであるが,センターの発展のためには関係する皆様方の御理解と御支援が不可欠である。これまで以上の,御理解,御支援をお願いする次第である。

第5期センター長 青野 重利