岡崎統合バイオサイエンスセンターリポート2009

岡崎統合バイオサイエンスセンターリポート2009の刊行にあたって

岡崎統合バイオサイエンスセンターは、岡崎3機関(基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所)と連携し、新たなバイオサイエンスを切り開くことを目的として設置された、上記3研究所の共通研究施設である。新しい学問分野を切り開くと言うことは容易いが、実際にこれを成し遂げることはそんなに簡単なことではない。これに携わる研究者の研究レベルが、世界標準で見てトップレベルであることは必要最小限の条件であるが、研究者が置かれている環境にも大きく依存すると思われる。新しい学問分野は、既存の学問分野の境界領域から誕生するということは、多くの人が認めるところである。この観点からすると、基礎生物学、生理科学、分子科学という異なった研究分野をバックグランドとする研究者が集まっている岡崎統合バイオサイエンスセンターは、新たな学問分野創成には最適な環境であると言える。このような中にあっ て、我々は、「新しいバイオサイエンス」とは何かという問題意識を共有し、組織としての方向性を明確にした上で、それぞれの研究者が研究を進める必要があるであろう。また、組織として目指す方向性の中での自分たちの研究の位置づけを常に意識しながら、それぞれの研究を進めることも重要である。

岡崎統合バイオサイエンスセンターでは、大阪大学蛋白質研究所と連携し、「生命の秩序化を担う膜蛋白質の構造・機能メカニズムの解明を目指す国際フロンティア」連携研究を、平成17年度から5カ年計画として実施してきた。本連携研究は、上で述べた「問題意識の共有」、「組織としての方向性の明確化」を図る上で大きな役割を果たしてきた。本連携研究は本年度で終了したが、現在、岡崎統合バイオサイエンスセンターでは、本連携研究で得られた成果をもとに、より包括的な統合バイオサイエンスの創成を目指した研究プロジェクトの準備が進んでいる。新しいプロジェクトを軌道に乗せ、目標とする成果を達成するためには、我々のより一層の努力はもちろんのこと、岡崎3機関との連携をこれまで以上に深めてゆく必要があると考えている。それとともに、関係する皆様方のご理解とご支援をお願いする次第である。

第5期センター長 青野 重利