植物発生生理研究部門基礎生物学研究所

研究内容

塚谷 裕一(客員教授)
川出 健介(特任准教授)

研究内容

 

これまで、分子遺伝学的なアプローチにより、発生現象を制御する因子が多数同定されてきました。私たちも、シロイヌナズナの葉において、細胞増殖活性を制御する細胞間シグナル因子ANGUSFITOLIA3を見いだし、原基内での動態に着目して研究を進めてきました。このような発生学を中心とする研究は、生物の形作りに関する理解を大きく進展させてきましたし、現在も、新しく興味深い知見を生み出しています。

 一方、このようなアプローチから、特定の代謝システムが特定の発生現象に関わっていることも、しばしば報告されています。これは、特定の代謝システムが、発生現象の進行を駆動する化合物を生成したり、進行を支える生体内での基盤を提供していると考えられます。ところが、多細胞生物における、発生過程に連動した代謝システムの制御というものは、思いのほか理解されておりません。

 そこで本研究室では、岡崎統合バイオサイエンスセンターBIO-NEXTプロジェクトのもと、メタボロミクス解析から発生現象を理解するという目的で、以下の研究を進めております。

(1)代謝システムへの摂動(代謝を担う酵素への遺伝的変異)が発生現象に与える影響(形態的な表現型へのアウトプット)を調べ、発生現象と代謝システムの未知なる関係を明らかにします。

(2)発生現象と代謝システムの連関を示唆するこれまでの知見をもとに、その関係性や仕組み、さらには生体内における機能的な側面をより詳細に明らかにします。

 これらの研究を遂行し、発生および代謝というキーワードを強く意識した新たな研究領域を拓こうと考えております。

 本研究室の特徴として、基礎生物学研究所・生物機能情報分析室の重信 秀治 特任准教授、理化学研究所・環境資源科学研究センター・代謝システム研究チームの平井 優美チームリーダー、山形大学農学部の及川 彰 准教授といった他研究室との密接な連携から、メタボロミクス解析を推進しているという点も挙げられます。

 ご自身の研究に、メタボロミクス解析を組み込んでみたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご連絡ください。このような関係の構築も、これまでにない研究領域を確立するには欠かせないものだと考えております。

Select Reference

  1. Kawade K., Tanimoto H. (2015) Mobility of signaling molecules: The key to deciphering plant organogenesis. Journal of Plant Research 128; 17-25.

  2. Kawade K. (2014) Proliferative control of leaf cells through inter-cell-layer AN3 signaling. Plant Morphology 26; 59-63

  3. Kawade K., Horiguchi G., Usami T., Hirai Y. M., Tsukaya H. (2013) ANGUSTIFOLIA3 signaling coordinates proliferation between clonally distinct cells in leaves. Curr. Biol. 23; 788-792.

  4. Kawade K., Horiguchi G., Ishikawa N., Hirai Y. M., Tsukaya H. (2013) Promotion of chloroplast proliferation upon enhanced post-mitotic cell expansion in leaves. BMC Plant Biol. 13; 143.

  5. Kawade K., Horiguchi G., Tsukaya H. (2010) Non-cell-autonomously coordinated organ size regulation in leaf development. Development 137; 4221-4227.